[韓国市民社会の動向]
6月2日韓国の統一地方選挙について(2)
6月2日、韓国では統一地方選挙が行われました。
今年は、4年に一度の韓国の統一地方選挙の年で、広域(ソウルなど7大都市と 9道)と基礎(全国230の自治区、市、郡)の首長と議員の選挙が一斉に実施されました。
前回に引き続き、今回は選挙の結果についてまとめていきたいと思います。
6月2日韓国の統一地方選挙について(1)はこちら、
http://japan.makehope.org/owner/entry/edit/137
4.結果と分析
6月2日、2月の予備候補登録の頃からすると100日余りに及ぶ選挙戦を終えてついに投票の日を迎えました。
その結果は、事前の世論調査などによる予想を覆して、与党・ハンナラ党の敗北、民主党など野党勢力の大勝利に終わりました。
今回の選挙において大きな注目を集めたソウル特別市の市長選は、政権党であるハンナラ党の呉世勲現ソウル市長候補と、野党の民主党の韓明淑元国務総理のデッドヒートが繰り広げられ、開票率99%を越えても結果が出ず、即日開票で翌朝まで分からないという状況でした。
重要度の高い広域自治体首長選挙では、16の選挙区のうち、ハンナラ党が6人、民主党が7人、諸派・無所属3人という結果になるなど、全体では民主党が善戦し、今後の政局に大きな影響を与えそうです。

■広域自治体首長当選者

・ソウル市長:呉世勲(オ・セフン)〔ハンナラ党 、再選〕
・釜山市長 :許南植(ホ・ナムシク)〔ハンナラ党、再選〕
・仁川市長 :宋栄吉(ソン・ヨンギル)〔民主党〕
・大邱市長 :金範鎰(キム・ボムイル)〔ハンナラ党〕
・大田市長:廉弘喆(ヨム・ホンチョル)〔自由先進党〕
・光州市長 :姜雲太(カン・ウンテ)〔民主党〕
・蔚山市長: 朴孟雨(パク・メンウ)〔ハンナラ党、再選〕
・京畿道知事:金文洙(キム・ムンス)〔ハンナラ党、再選〕
・慶尚南道知事:金斗官〈キム・ドゥグァン〉〔無所属:野党統一候補〕
・慶尚北道知事:金寬容(キム・グァンヨン)〔ハンナラ党、再選〕
・忠清北道知事:李始鐘(イ・シジョン)〔民主党〕
・忠清南道知事:安熙正(アン・ヒジョン)〔民主党〕
・江原道知事:李光宰(イ・グァンジェ)〔民主党〕
・全羅南道知事:朴晙瑩)(パク・チュニョン)〔民主党、再選〕
・全羅北道知事:金完柱(キム・ワンジュ)〔民主党、再選〕
・済州道:禹瑾敏(ウ・グンミン)〔無所属〕
選挙結果について、首長選、広域自治体、基礎自治体の別に情勢の概要を、まとめました。
その上で、民主党の勝因を分析しています。そこでは、
・「天安艦沈没事件の調査結果」の発表から対北朝鮮安保に対する不安心理をかき立てるハンナラ党の「北風」に対する“盧 風”(一周忌を迎えた前大統領とへの追悼機運)の巻き返し
・Twitterなどのソーシャル・メディアによる若い世代の関心の高まり
・野党勢力の連立や統一
があるとあげています。Twitterによる若者の自発的なネットワークが選挙情勢に影響を与えている点は、とても興味深いものがあります。また、民主党が躍進しましたが、地方選挙が中央政府の動向を大きく反映する中、これからの地方自治、市民社会づくりの議論の成熟が重要だと考えています。
◆選挙結果:情勢のまとめ◆
ハンナラ党は、広域首長選では、ソウル・京畿道の2大地区でなんとか再選を果たしたものの、保守の牙城ともいえた江原道、慶尚南道で敗れ、前回(06年)の統一地方選では16人中12人いた首長が6人と半減してしまいました。これに対して民主党は仁川を初め7人の当選、野党統一候補の慶尚南道を含めると8人の当選者を出して大躍進しました。
しかも、地方選挙の華ともいえるソウルでも、民主党(韓明淑候補)は、敗北したとはいえ、当選した呉世勲ハンナラ党候補との票差は0.6%(2万票余り)で3%余りを獲得した進歩新党・魯會燦(ノ・ヘチャン)候補の票を合わせると、ハンナラ党は半数を下回っていました。さらに、ソウル25区の区長選挙では、富裕層の集中する江南地域を除く21区で民主党が勝利し、呉世勲市長は「江南市長」との異名を冠せられることになりました。ソウルの市議会も106議席中79議席を民主党が占める圧倒的な「与小野大」となり、再選を果たしたとはいえ呉世勲市長は、極めて難しい市政運営を迫られることになります。京畿道でも124議席中民主党など野党が82議席を得て、ここでも再選を果たし金文洙候補の前途は多難といえます。広域議会全体でも地域区でハンナラ党が議席を半減させた反面、民主・民主労働党が議席を3倍にしてほとんどの議会で過半数を制することになりました。
基礎自治体についてもハンナラ党は、議会では三分の一減で踏みとどまったとはいえ、首長は半減と劇的な敗北を喫しました。さらに自治体選挙と同時に実施された教育監、教育議員選挙も、保守優位と見られていたソウル・京畿・江原でも進歩派統一候補が当選し、現政権の新自由主義的な教育行政に歯止めがかかること期待されます。
韓国の進歩勢力は、04年の弾劾政局*下の国会議員選挙で勝利して以来、06年統一地方選挙(連載②参照)、07年大統領選挙、そして08年国会議員選挙と敗北を重ねた末の、6年ぶりの大勝利となりました。
選挙前の世論調査でも各地で10%前後のリードを保っていました。それだけに敗北の衝撃は大きく、直ちに鄭夢準(チョン・モンジュン)党代表や鄭正佶(チョン・ジョンギル)大統領秘書室長が辞任を表明しました。
◆民主党の勝因:ソーシャル・メディアの影響も◆
こうしてハンナラ党が大敗北を喫した背景はさまざまに指摘されています。
与党ハンナラ党は、5月20日の本格的な選挙運動の開始日に「天安艦沈没事件の調査結果」を発表して対北朝鮮安保に対する不安心理をかき立て(いわゆる北風)ました。“北風”に対する“盧風”(一周忌を迎えた前大統領とへの追悼機運)の巻き返しの程度が一つの見所でしたが、後者の影響が思いのほか大きく、元来、保守色のつよい慶尚南道、忠清南道、江原道で故盧武鉉氏に近い候補が当選を果たしています。
さらに、ツイッター(利用者60万人)やスマート・フォン(同200万人)など新しい社会的ネットワーキングが、若い世代を投票所に赴かせ、進歩勢力の勝利に貢献したといえます。投票日が近づくにつれツイッターによる投票の呼びかけが増加し、投票日にはスマートフォンなどで投票所前の自身の写真をアップロードする“認証ショット”がブームとなりました。
ツイッターで投票を訴えた心ある映画人や芸術家、芸能人も少なくありませんでした。こうした新たな選挙文化が投票率を押し上げ(54.5%、前回51.6、前前回48.9)、与野党の拮抗する各地の選挙区で野党候補の得票を嵩上げしたといえます。
06年の統一地方選挙で民主・ウリ党の分裂が進歩勢力の敗因の一つとなったことから、野党勢力の連立や統一(野圏単一化)が懸案となり、3月初めの段階で、民主党・進歩新党・民主労働党・創造韓国党・国民参与党の野党5党と、「希望と代案」や「2010有権者希望連帯」(連載③参照)など4つの市民団体が選挙連合と協力について合意しました(「5+4会談」といわれました)。その後、進歩党新党が離脱するなど曲折もありましたが、選挙連合は、仁川、江原道、忠清南北道、慶尚南道をはじめ、広域・基礎の首長・議員選挙、さらに教育監選挙で威力を発揮しました。市民運動団体が主導して「市民ガバナンス委員会」をつくった高揚市(京畿道、ソウルの北に隣接し人口94万人)のように、単なる「候補単一化」のレベルを超えて「地方連立政府」の試みにまですすんだ地域も少なくありません(希望製作所のプリセンター長を務めた金達洙さんが高揚市選出の京畿道議員に当選を果たしています)。
◆選挙を踏まえ、地方自治、市民社会を深めることが重要◆
ただし、若い世代の投票の増加が民主党の勝利に結びついたとはいえ、必ずしもこれらの有権者が民主党を支持していたとは限りません。むしろ李明博党政権の強引で権威的な政治手法に対する反発や牽制心理、あるいは有権者のバランス感覚が今回のような選挙結果を生んだというのがもっぱらの評価です。
今回の選挙結果に示された有権者の意思は、治安・情報機関をつかった政治報復まがいの選別捜査や国政運営の強引さが目に余っていたハンナラ党政権に大きな打撃となり、冬の時代を耐え忍んでいた市民団体にとっても光明となる出来事だといえます。
しかし、今回の選挙では、基礎自治体までも政党公認制が適用されたこともあって、各政党のキャンペーンも有権者の関心も、そしてマスコミの報道や論評も、李明博政権の中間評価といった中央政治の争点に過度に引きつけられて、肝心の住民自治や地域民主主義をめぐる政策論議がどれほど深まったのか、という点ではいまひとつ不透明な感が否めません。「地方連合政治」や「野圏単一化」をめぐって各地で地道に取り組まれた進歩政党・市民団体の政策論議が今後の自治体改革や地域創造にどれだけ活かされるのか、注目されるところです。
Posted by ミネ

