9月14日、希望製作所の常任理事である朴元淳弁護士に対して、民事訴訟が起こされました。「大韓民国」が原告であるこの訴訟についてどうなっているのか、ご心配下さっている方は多いようです。韓国の希望製作所では、会員が増え、朴元淳弁護士が歩いていると道行く方が激励のために近寄ってこられることもしばしばです。
以下、ことの成行きについて、少しご説明したいと思います。
希望製作所は、設立以来、市民のアイデアを集めてこれを政策にまで練り上げ、市民のための市民によるシンクタンクとして、中央政府、地方自治体、企業などに積極的な政策提案を行ってきました。その成果の一つとして、地方都市の情報提供とアンテナショップ機能を有する「地域広報センター」がソウル市庁前のプレスセンター一階に誕生しました。そして提案者である希望製作所は、行政自治部(現在に行政安全部)とその企画・運営に関する委託契約を結びました。
李明博政権となり、米国産牛肉の輸入問題に端を発した「ろうそくデモ」が韓国社会を揺るがしました。この「ろうそくデモ」が下火となった頃、希望製作所は、突然、行政安全部より契約解除の通告を受けました。さらに、様々な企業、公的機関からプロジェクトや契約が取り消されるという事態が起こり始めました。
やがて、こうした事態が希望製作所だけはなく、多くの市民団体で起こっていることが少しずつ分かってきました。そして、ろうそくデモに参加した諸団体のブラックリストが出回り、それらの団体には一切、支援すべからず、という政府の方針が陰で伝達されているということも確認されてきました。
市民団体への圧力が強まるのと並行して、盧武鉉前大統領への収賄疑惑が執拗なまでに追及され、前大統領が自死という悲劇的な最期を遂げたことは記憶に新しいと思います。朴元淳常任理事は、盧武鉉前大統領とは同じ民弁(民主社会のための弁護士の集い)に属し旧知の間柄でした。李明博政権を痛烈に批判したその追悼文は、「もはや黙っているべきではない」、そんな決意を滲ませた内容でした。(追悼文はこちらからご覧いただけます。)朴元淳常任理事は、さる6月『ウイークリー京郷』のインタビューのなかで、「国家情報院が市民団体を支援している企業の役員まで調査し、個別に連絡して支援しないように促し、その結果、多くの団体が財政難に陥っている」ことを明らかにし、「明白な民間査察であり国家情報院法違反」だと痛烈に批判しました。
政府は、9月14日、こうした批判が国家情報院への名誉棄損であるとして、ソウル中央地裁に国家を原告として2億ウォンの損害賠償請求訴訟を起こしました。国家が個人を対象として訴訟を起こすのは、韓国ばかりか世界的にも例がないということです。9月17日、希望製作所での記者会見で、朴元淳常任理事は、「いまだにこのような社会に暮らしているのだということを嘆かわしく思い、また恥ずかしくも思っている。国家や国家の政策を批判する自由は、民主主義やより質の高い社会をつくるための核心だと言わざるをえません」と語っています。市民団体の活動家の多くは、「民主化を推進し、多くの問題を抱えつつも前に向かって進んできた大韓民国はいま、再び軍事政権時代に戻っている」と悲嘆しています。しかし同時に、「こんなときだからこそ連帯し、再び浮上することができるのだ」という力強い声もよく耳にします。
こんな大事件も楽しんでしまえ、と言わんばかりに、「全国民名誉回復対策本部!」という対策委員会がつくられました(http://www.1gokorea.com/)。闘う姿勢を貫きながらも、ユーモア溢れる運動を展開しようとしているのです。
先日、朴元淳常任理事からは「いま、希望製作所の会員はかえって増えています。政府のなかにも訴訟自体が誤りであり、取り消すべきだという意見もあります。民主主義を守るためにこれまでも努力してきましたが、これからも闘い続けていきます」という力強いメッセージが届きました。また、
ひとりひとりの市民ひとりひとりの市民の支援を呼びかける努力が功を奏し、着実に会員は増えています。
日本希望製作所では今回の事件について、随時、皆さまにお知らせしていきたいと思っています。一人でも多くの皆さまに関心を寄せていただき、ご支援いただくことを念じてやみません。(文責:桔川純子)
※国家情報院:1999年金大中政権下で、「国家安全企画部」(「韓国中央情報部(KCIA)」が改称された組織)が「国家情報院に改変された。国家安全保障にかかわる情報・保安および犯罪捜査に関する事務を担当している大統領直属の機関。国情院は略称。
Posted by ミネ

